オランダなのにドイツ環境心理学会!?
2003年9月,私はオランダのアイントホーヘンで行われたドイツ環境心理学会に初めて参加した。そう,ドイツの学会であるはずなのだがなぜか開催地はオランダであった。もっともアイントホーヘンはドイツの国境近くの町で,ドイツ各地からの参加者も特に違和感は感じていないようだった。発表言語は英語であり,参加者はドイツに限らずスイス,オーストリア,オランダ,イギリスなどヨーロッパ中の各国から集まっていた。
学会には赤ちゃんも参加OK!
学会会場に入った私の目にまず止まったのは,階段で赤ちゃんをだっこしている女性研究者だった。話しかけてみると赤ちゃんは5ヶ月の女の子で,スイスから夜行列車で来たという。12時間もかかったと聞いて驚く。まだ母乳を飲んでいるので連れてきたらしい。それまで部屋で発表を聞いていたけど,赤ちゃんがぐずりだしたので廊下であやしに出たところだった。赤ちゃんが落ち着いてきたので,彼女と一緒に部屋に入った。中に入ると床に座って聞いている人が何人もいるのが驚きだったが,赤ちゃんが来てもだれも驚かず,ぐずり始めると周りの人があやしていた。
学会での託児について知り合いと議論したばかりだったので興味があって観察してしまったのだが,日本でははたして赤ちゃんを連れて発表会場に入れるのだろうか。おそらく周りに気を使ってしまってできないのではないだろうか。赤ちゃんが一緒にいても違和感なく自然に受け入れている会場の雰囲気が私には新鮮だった。
おそらくこの学会は小規模なこともあって,インフォーマルな雰囲気で活発な発表,議論が行われていた。スーツを着ている人が少なく,ジーンズで床に座って発表を聞くというスタイルがよく見られた。
海外研究者の就職事情
今回のドイツ環境心理学会では,ヨーロッパの著名な環境社会心理学者の発表を間近に見ることができただけでなく,若手の研究者らと親しく話しをすることができたのが収穫だった。就職難のことなどヨーロッパの大学院生たちも日本の大学院生と似た悩みを持っていた。ただ違いは,ヨーロッパでは自分の国で就職がないときは外国での就職というオプションを考えられることである。そのようにして,研究環境の整った国に優秀な研究者らが集まっていくのだろう。けれどもう1つの共通点としてヨーロッパでも日本と同じく心理学の研究者は女性が比較的多く,家族と離れて遠くで就職をするべきかという悩みを持っているようだった。
終わりに
学会の懇親会はアイントホーヘンの誇るサッカー・スタジアム,フィリップス・スタジアムで行われた。そして最後,次回の学会はドイツ・ボホムで開催されるという発表があった。ボホムは私の共同研究者らのいる大学である。次回も必ず参加することを約束して学会を後にした。
Photograph collection
アイントホーヘンの町並み
学会の行われたアイントホーヘン工科大学
ポスター発表
懇親会の様子